
儲かっていても、それは、あくまで評価益であり、含み益であり、非常に流動的なものなので、もしアメリカで起きた同時多発テロのような突発的な大きい悪材料が出たら、含み益は吹っ飛んでしまいます。
とくに、現物株投資に比べ、リスクの大きい、お金を借りて株を買う信用取引においては、相場見通しに迷いが出たら、利益の出ている間に利食っておきなさいと強く教えています。
1000円の株を1万株買うと購入代金は1000万円ですが、信用取引の場合、通常は30%の300万円を担保に差し入れて、1000万円相当の株を買います。
もちろん、借りたお金には、結構、高い金利がかかります。もし、この例で、買った株が1000円から700円に下がったらどうなるでしょう。自分の能力範囲で買う現物投資なら、「あー、あー、下がったか。上がるまで待つか」と、自分さえ納得すればすみますが、信用取引ではそうはいきません。ある意味で、借金取りより厳しいのが、信用取引の担保切れによる「追証」の要求です。
株価が300円値下りすれば、1万株ですから300万円の損失です。差し入れた担保保証金300万円は吹っ飛びます。株価700円に対し、さらに30%の210万円の追加保証金を差し入れるように厳しい要求がきます。追証に応じるか、700円で売却して最初に差し入れていた300万円で穴埋めするか、さらに700万円出して現物で買い取ることになります。
信用取引の場合は買い値から10%上昇したら売るといわれます。このことから、売って懐に入れてしまえば、千人の味方にも匹敵するという意味で、「利食い千人力」の格言が説得力をもつのです。利食ってしまえば、誰からも文句を言われることはないのです。
戦後の高度経済成長の時代には、土地の値段は右肩上がりでしたから、借金(株なら信用買い)してでも土地を買っておけばよく、土地については「利食い千人力」の言葉は当てはまりませんで、むしろ、土地を持っていない人や企業がバカ呼ばわりされた時代でした。1990年のバブル天井で一転、土地は急落、借金で土地を持っていた企業ほど厳しい状況に追い込まれて、最悪のケースでは経営破たんとなってしまいました。個人も企業も、世の中というものは、ほどほどがいいようで、有頂天や迷っているなと思うときは、この格言を実行したいものです。
2009-06-26 17:00 に掲載の記事