
なぜでしょうか。答えは簡単です。多くの銘柄の中から、これから上がる銘柄を見つけるより、今、動いている銘柄を見つけることのほうが、はるかに楽だからです。
株の売買には、現物株取引のほかに、お金や株券を借りて売買する信用取引があります。このケースでは、今にぎわっている銘柄の株券を借りて売るのです。これを「カラ売り」といいます。売ったところから、狙い通り下がれば、買い戻して株券を返せば、株価が値下がりした分だけ儲けることができます。買って儲けようとする場合は、買った値段より値上がりすることで儲かるわけですが、カラ売りは値下がりすることで儲けることができる手法です。
値上がりを狙う場合は、多くの銘柄の中から、次にどの銘柄が上がるかを探さなくてはいけません。大変なエネルギーが必要となります。しかし、今にぎわっている銘柄を見つけるのは簡単です。出来高上位銘柄とか、本日の上昇率上位銘柄といったデータが発表となっていますから、見つけることは容易です。もちろん、売った値段より値上がりした時は、損が発生するリスクがあります。
とくに、買った銘柄が値下がりする時以上に、カラ売りで株価が上昇するほうが、どこまで上がるか分からない怖さがあります。このため、プロと呼ばれる人はあらかじめ、ここまで上がったら損を覚悟で買い戻す水準を必ず決めています。これからカラ売りをやってみようという人は、この点を肝に銘じておいてください。
ところで、なぜ個人は、「買い」から入ることに慣れているか、ということについては3つばかりの理由がありそうです。
1つは、われわれは日頃から物を買うことが好きなことがあります。株も物を買う時と同じ心理が働いています。
2つ目は、証券会社にとって、買いから入ってもらうのが収入増加に結びつきやすいことがあります。物は買って消費すればそれでひとまず終了し、使ってしまえば、再度、購入が見込まれます。しかし、株は会社が倒産しないかぎり株券はなくなりません。この点に物と株の大きな違いがあります。株は売らないことには利益にならないのです。つまり、買った株は、いずれ必ず売ってくれるのですから、証券会社に手数料が2回入るわけです。もちろん、その場合、投資家が儲かっているか、損しているかは問題ではないのです。
3つ目は、売りから入ると危険が伴うから、売りはタブーとされてきました。もちろん、資本主義の発展のためには、株を買って株主になるという、株を買うことの大切さがあることはいうまでもありません。
掲載日 2009-06-23 18:00